皆さんのメール受信箱に、一度は「なんか怪しいな…」と感じるメールが届いた経験はありませんか?
今回ご紹介するのは、弊社代表宛に届いた「PayPayカード」を装った不審メールの解析結果です。メールのヘッダー情報をもとに、スパムである可能性が非常に高い理由をわかりやすく解説します。
まず、ヘッダー情報とは、メールの「履歴書」のようなもので、「誰が、いつ、どこを通って、誰に送ったか」といった技術的な情報が記録されています。普段は目にしませんが、迷惑メールの判別やトラブルの原因調査には欠かせない情報です。
今回のメールでは、複数の「危険信号」が見つかりました。最初のポイントは、スパム判定の明確な証拠です。メールのヘッダーには「X-Spam-Score: 300」や「X-Spam-Status: spam:medium」と記載されており、スパム判定用のシステムがこのメールを明確に「危険」と判断しています。通常のメールではスパムスコアは5〜10程度なので、300という数値は異常と言えます。
また「X-Vade-Spamcause」という不可解な文字列も付与されており、これは専門的なスパム対策ツールによる自動分析結果で、スパムとして扱われた証拠です。
次に注目すべきは「spf=softfail」という記録です。SPF(Sender Policy Framework)は、メール送信元が正当かどうかをチェックする仕組みですが、このメールでは送信元ドメインと送信者のIPアドレスが一致しておらず、「正規のメールとは断定できない」と判定されていました。PayPayカードのような大手企業が、このような不正確な認証状態でメールを送ることはまずありません。
さらに、Return-Path(エラー時の返信先)に設定されていたアドレスが「ef@savew.net」で、PayPayカードとは無関係なドメインでした。これは偽装の典型的なパターンです。スパムメールはしばしば、こうした怪しいドメインを使って送信されます。
極めつけは、使用されていたメールクライアントが「Microsoft Outlook Express 6」という、もはやサポートも終了した非常に古いソフトだったことです。最新の金融機関がこのようなソフトを使っているとは考えにくく、スパム業者が古い環境を悪用して送信していることを示唆しています。
以上の点から、このメールは複数の角度から明確に「スパム」と判断できます。
皆さんも、似たようなメールを受け取った際は、本文の内容だけでなく、こうしたヘッダー情報を確認する習慣を持つことをおすすめします。特に、有名企業や金融機関を装ったメールには要注意です。リンクのクリックや添付ファイルの開封は絶対に避け、安全な通信環境を守る意識を持ちましょう。
次回は、こうしたヘッダー情報を誰でも簡単に確認・分析する方法をご紹介します。お楽しみに!